設計料について

 設計料のことを話す前に設計とはどう言うことをするのか説明する必要があると思います。一般的に住宅の設計と言うものが認知されていないと考えるからです。昭和25年に建築士法、建築基準法が施行されて初めて公に建築士と言う職業が出来た訳ですが、それまでは、家を建てるには何十人かの大工を束ねた大工棟梁が間取りを考えて家を建てていた訳です。すなわち間取りを考える人と建てる人は同じ人だったのです。そこに建築基準法なる法律が出来、法律の基準にあった建物を役所に確認してもらうために建築士が生まれ、建築士事務所が出来ました。
 建築士事務所(建築設計事務所)は、まず最初に大工の棟梁から建築確認申請の代行業務を請け負うことから始まった訳です。それからある大工棟梁は大工たちを束ねて地方の工務店になったり、または、徒弟制度の崩壊により大工たちはバラバラになって独りかふたりで仕事を請け負う個人営業の大工さんになって行きました。大工たちを束ねる真の大工棟梁は、現在では殆ど存在していません。すなわち昔、間取りを考え、町並みを作りデザインして来た大工棟梁の役目を誰がになって行けば良いか?。それは、ハウスメーカーでしょうか。私は、やはりその土地を見きわめた地方の設計事務所がになって行かねばならないと思っています。
 設計料の基本は、建築確認申請の代行業務ではあるのですが、昔の大工棟梁がいなくなった今、一つ一つの住宅をデザインしてきれいな町並みを作ることが設計事務所の使命であると考えます。住宅を建てる者(施主)と設計者は同じ価値観をもち、ふたりの信頼関係による共同作業で住宅をデザインし建てなければならないと思います。そのことが地域社会の自然環境、住環境を守ることにつながると思っています。設計料は、その代価として支払わねばならないものだと思っています。